インザベッドルーム

I n t r o d u c t i o n

　本当に大切に思っている人を失った時、私たちは平静ではいられない。その時、自分は何をしたらいいのか、何ができるのか……。ファウラー夫妻は、だれよりも愛していた息子を殺された。幸せな夫婦は、一転、不幸のどん底にたたき落とされ、葛藤し、互いを傷つけあった。しかし、やがて二人が再び信頼で結ばれた時、夫はあることを決意した。絶望感と怒りの中で、彼が見出した究極の選択とは……！？

「イン・ザ・ベッドルーム」は、ゴールデン・グローブ賞で主演女優賞を受賞し、アカデミー賞でも作品、脚色、主演男優（トム・ウィルキンソン）、主演女優（シシー・スペイセク）、助演女優（マリサ・トメイ）の5部門にノミネートされた秀作である。その繊細なリアリズムと俳優たちの卓越した演技は、喪失の悲しみと苦しさを私たちの胸に沁みわたらせ、心を揺さぶらずにはおかない。

Profile of Hero／Heroin

Tom Wilkinson
　
「フル・モンティ」（97）のジェラルド役を演じて世界的な注目を集め、BAFTA賞助演男優賞にノミネートされて以来、イギリスとアメリカで最も多忙な役者の一人となった。これまでに出演した主な作品は、「ウェザビー」（85・V）、「父の祈りを」（93）、「司祭」（94）、「いつか晴れた日に」（95）と「楽園をください」（99）、「オスカー・ワイルド」（97）、「オスカーとルシンダ」（97）など。アカデミー賞受賞作「恋におちたシェイクスピア」（98・BAFTA主演男優賞にノミネート）、大ヒット作「ラッシュアワー」（98）に続いて、「パトリオット」（00）ではメル・ギブソンの相手役を務めた。最近ではイギリスのサスペンス映画「The Essex Boys」。「The Black Knight」、「The Importance of Being Earnest」も控えている。母国イギリスでは舞台俳優として知られ、ナショナル・シアター、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーなど名門劇団と共演。

Sissy Spacek

　1972年に「ブラック・エース」で映画デビュー。「地獄の逃避行」（73）で注目を集め、76年に「キャリー」でアカデミー賞候補に。80年には「歌え！ロレッタ愛のために」（80）でアカデミー賞のほかゴールデン・グローブ賞、ロサンゼルス映画批評家賞、ニューヨーク映画批評家賞を受賞するという快挙を成し遂げた。以降、「ミッシング」（82）、「ザ・リバー」（84）、「ロンリー・ハート」（86）、などこれまで6回もアカデミー主演女優賞にノミネートされている。ほかに「三人の女」（77）、「すみれは、ブルー」（86）、「ロング・ウォーク・ホーム」（90）、「JFK」（91）、「グラスハープ　草の竪琴」（95）、「白い刻印」（97）、「タイムトラベラー　きのうから来た恋人」（99）、「ストレイト・ストーリー」（99）などがある。

Marisa Tomei
　
1992年にヒット・コメディ「いとこのビニー」でアカデミー助演女優賞を受賞し、国際的なスターの座を手に入れた。主な出演作は「堕ちた恋人たちへ」（92）、「チャーリー」（92）、「忘れられない人」（93）、「ザ・ペーパー」（94）、「太陽に抱かれて」（95）、ジーナ・ローランズと共演した「ミルドレッド」（96）、「ウェルカム・トゥ・サラエボ」（97）など。最近では「ハート・オブ・ウーマン」（00）「恋する遺伝子」（01）。今後公開予定の作品には、フィッシャー・スティーブン監督のラブ・コメディ「Just A Kiss」がある。また、『暗くなるまで待って』でブロードウェイ・デビューした後、ジョアン・ウッドワード演出の『Waiting for Lefty』や『Rocketto the Moon』、ノーベル賞を受賞した劇作家ダリオ・フォーの『We wont Pay！ We Wont Pay！』など、舞台でも活躍している。

The Director

初めての監督作にして、類いまれな洞察力に基づく深い人間観を見せたのは、「アイズ・ワイド・シャット」などで知られるベテラン俳優トッド・フィールド。彼は10年ほど前に作家アンドレ・デュバスの書いた物語と出会った。ニューイングランドの中流階級を舞台に、家族と人間の絆、失われた愛、暴力の本質に鋭く迫ったその著作群から、監督は多大なインスピレーションを受けたという。それはまさしく“アメリカ人の意識”だった。彼はロブ・フェスティンガーとともにデュバスの短編を基に脚本を書き上げ、人間の心と魂を情感豊かに描き出した。
　

Production Note

　
　この作品の成功の鍵を握っていたのは俳優たちの演技だといっても過言ではない。「キャリー」から「ロンリー・ハート」まで5度もアカデミー賞にノミネートされ、「歌え！ロレッタ愛のために」で見事オスカーを手にしたシシー・スペイセクと、イギリス出身ながら「フル・モンティ」「恋におちたシェイクスピア」でハリウッドでも引っ張りだこになったトム・ウィルキンソン。誰もが認める当代随一の役者たちは、ファウラー夫妻のやるせない心情を静かに表現し、見る者の心に訴える。スペイセクはこの作品でゴールデン・グローブ賞、NYとロスの映画批評家賞を受賞。ウィルキンソンもNY批評家賞に輝いている。

ニューイングランドの美しい風景の中に、人々の悲しみを静かに写し撮ったカメラは撮影のアントニオ・カルバーチェ。編集のフランク・レイノルズ、衣裳デザインのメリッサ・エコノミーといった一流スタッフのほか、音楽には「アメリカン・ビューティー」「グリーンマイル」の大御所トーマス・ニューマンが当たり、情感をよりいっそう盛り上げている