I n t r o d u c t i o n 

　原作は1989年に出版されたジョゼフ・フィンダーの同名小説“High Crimes”（新潮文庫『バーニング・ツリー』）。国際政治研究者という著者の経歴を生かしたポリティカルな設定と、法廷ミステリーをうまく融合させたベストセラーである。夫のショッキングな過去、裁判の過程で明らかになっていく戦時下の犯罪と特殊部隊の秘められた任務、そして軍上層部の暗躍。軍事法の特殊な規定の下で、裁判の息詰まる駆け引きがスピーディーに展開していく。

　この原作を、よりエキサイティングに映像化したのはカール・フランクリン監督。これまでに「運命の引き金」「青いドレスの女」「母の眠り」などの作品で、アメリカ映画界のトップクラスの一人に数えられている監督は、この映画を単なるスリラーにとどまらず、深みのある人間ドラマに仕立て上げた。

　愛する夫の過去を知ってショックを受けながらも、冤罪を晴らすために奔走する弁護士クレアには、「あなたのために」「恋する遺伝子」のアシュレー・ジャド。彼女を助ける元軍の弁護士チャーリーには「コレクター」でジャドと組んだモーガン・フリーマンが当たり、再び絶妙なコンビネーションを見せている。また、「シン・レッド・ライン」でブレイクして以来「ペイ・フォワード／可能の王国」「オーロラの彼方へ」と好調の波に乗るジム・カヴィーゼルが、慈愛さえ感じさせる深い瞳の奥に謎を秘めて、かつて特殊部隊員だった夫トムを好演している。

C a s t  &  S t a f f

　　アシュレイ・ジャド　・・・・・・・・・・・・・　（夫の弁護をする弁護士　クレア）

　　ジム・カヴィーゼル　・・・・・・・・・・・　（元海兵隊兵士でクレアの夫トム）

　　アダム・スコミット　・・・・・・・・・・・・・　（米軍弁護士　エンブリー中尉）

　　監督／カール・フランクリン

Profile of Hero／Heroin

Ashley Judd
　1968年カリフォルニア州生まれ。ケンタッキー大学を卒業して数年間演劇を勉強し、TＶ”Sisteｒｓ”=（91）に出演し女優としてデビュ-。　「カフス！」（92）の端役で映画への足がかりを作る。サンダンス映画祭でグランプリとなった「ディープ・ジョバディ-」（93）では主役のルビーを演じ、シカゴ批評家協会員の各種賞を受賞した。続いて「ナチコラル.ボーン・キラーズ」（94）、「ヒート」（95）、「聖なる狂気」（95）、「スモーク」（95）などに出演。　その後「ノーマ・ジーンとマリリン」（96）で一躍注目を浴びる。「評決の時」（96）、「ザ・.□ー力スト/あばかれた夏」（97）、「コレクター」（97）、「サイモン.バーチ」（98）、「氷の接吻」（99）、「ダブル.ジョバディ-」（99）、「あなたこのために」（00）などに出演。


Morgan Freeman
　１９３７年米テネシー州生まれ。観客、批評家、俳優仲間からも敬愛される、いまやアメリカを代表する俳優の一人。　８７年の「ＮＹストリート・スマート」の演技で一躍注目され、アカデミー賞ノミネート。　主な出演作は９４年「ショー・シャンクの空に」、８９年「ドライビング・ミス・デイジー」、「コリオレーナス」ではオビー賞受賞。　９３年には「ボッパ」で映画監督デビューも果たす。　近作は０２年「ハイクライムズ」、「トータル・フイアーズ」


Jim Caviezel
　１９６８年ワシントン州生まれ。１０代の時「マイ・プライベート・アイダホ」のオーディションに参加し役を得る。　主な出演作は「ワイアット・アープ」、「ミッドナイト・スティング」、「ＧＩジェーン」、「シンレッド・ライン」、「楽園を下さい」、「エニイ・ギブン・サンデー」、００年『オーロラの彼方へ』、０１年『ペイ・フォワード』など

The Director

　監督のカール･フランクリンは1949年カリフォルニア州リッチモンド生まれ。「運命の引き金」（91/V）、「青いドレスの女」（95）、「母の眠り」（98）などの作品で、その演出力によりアメリカ映画界トップランクの監督と目されている。　アメリカン・フィルム・インスティチュート（AFI）で演出を学び、卒業制作“Punk”(89)が注目される。　「運命の引き金」(91/V)の監督に抜擢され、ロサンゼルス映画批評家協会のニュー・ジェネレーション賞、インディペンデント・スピリッツ賞の最優秀監督賞、MTVムービー・アワードの最優秀新人監督賞、コニャック・ミステリー映画祭のグランプリや批評家賞など数々の賞を贈られている。その他監督作は　「青いドレスの女」(95)、「母の眠り」(98)。

Production Note

　
原作の舞台はボストンだが、映画ではサンフランシスコに変更された。撮影が冬だったため、雪景色の映画にする事を避けたのだ。さらに、サンフランシスコはアメリカでも有数の美しい町であり、軍の基地に近接している事もポイントとなった。

映画の中でカリフォルニア州のサン・ラザロ米軍海兵隊基地と言う設定で撮影されたのは、オークランドのアラメダ海軍基地。どこかよそよそしいアールデコ調の雰囲気で、フランクリンの要求を満たした。「我々の目標は、伝統的な概観の基地よりもさらにタフな環境にクレアをおいて、彼女を”水から上がった魚”」にすることだった。　あの基地は彼女たちにとって恐ろしい敵なんだ。

鑑賞後の一言
　モーガン･フリーマンが主演している映画というので、面白そうだと思い観てみた。　モーガン･フリーマンは思ったとおり、いつもの渋く落ち着いた感じで存在感を感じさせた。　アシュレイ･ジャドも気丈でいて、どこか可愛らしい女優で、二人の名コンビによる弁護士ぶりで楽しませてくれた。